TRACK 2
音楽が似合う街、横浜へ音のドライブ
数々の名曲の舞台となってきた横浜。その魅力は年代、ジャンルを問わず多くのミュージシャンに多大なるインスピレーションを与えてきた。東京からクルマでわずか一時間足らずの港町で古き良き楽曲に耳を傾ける。
Photography_Keita Shinya (ROLLUPstudio.) Words_Shogo Hagiwara
Bar StarDust にあるジュークボックス。
サザンオールスターズが曲を捧げた「Bar StarDust」
異国情緒が漂う横浜ほど音楽が似合う街はそう多くないだろう。実際、この港町を舞台にした楽曲は数多く、矢沢永吉やいしだあゆみが歌った往年の名曲に限らず、ゆずやセカオワことSEKAI NO OWARI といった現代を代表するバンドも横浜の街を歌った曲を紡いでいる。サザンオールスターズもまた横浜と縁の深いバンドとして知られるが、なかでも『思い出のスター・ダスト』と題された一曲は、横浜港のノースピア(=東神奈川駅方面にある瑞穂埠頭の別称)にある「Bar StarDust」へ捧げられたトリビュートソングだ。
横浜を代表するアイコニックなバーとして時代にその名を刻むStarDust のオープンは、いまから半世紀以上さかのぼった1954年。海に向かって開けた窓からみなとみらいの夜景が望める店内は、まるでかつての古き良き時代にタイムトラベルしたかのようなノスタルジックな空間だ。くだんのサザンをはじめとする所縁のあるアーティストの写真やアートワークも随所に飾られている。なかでもひと際の存在感を放つのが、1970年代製という年季の入ったジュークボックス。世界を代表するジュークボックスメーカーのSEEBURG 社(アメリカ)が製造したもので、オールディーズからザ・ビートルズのヒットナンバーまでリクエストに合わせてアナログレコードから直接曲を奏でてくれる。デジタルにはない重厚な音域はユニークで、このジュークボックスの音響を聴くためだけにバーを訪れる客も多いという。
StarDust から港湾に沿って「ジャガーXF スポーツブレイク」のアクセルを南へ踏み込むと今度は桜木町に着く。ここは日本最大級のジャズフェスティバルである「横濱ジャズプロムナード」が開催されるなど、ジャズとの関わりが深いエリアだ。ジャズを楽しめるカフェやバーも多く軒を連ねるが、ぜひ訪れたいのが日本最古のジャズ喫茶のひとつとして知られる「ちぐさ」。戦前の1933年開業で、のちに日本を代表するジャズプレイヤーとなった秋吉敏子や日野皓正もここでライブを行い薫陶を受けたほど。当初より「音を聴くための店づくり」を実践しており、創業者・吉田衛のその思いは店内に一歩足を踏み入れるだけで一目瞭然だ。オリジナルは、ビクター社のエンジニアが「ちぐさのために」特注でつくったという大型スピーカーが店の一端に並んでいる。客席は、そのスピーカーが放つ音色を真正面から最高のポジションで受け止めるべく配列されており、「音」を優先させた創業者の気概が、ジャズの音色を通して文字通り体感できるファン垂涎のスポットとしていまも客足は絶えない。
これまで映画やテレビドラマなどにもフィーチャーされてきた「Bar StarDust」のネオンサインはあまりにも有名だ。照明をぐっと落とした店内は古き良き時代を感じさせる。
Bar StarDust
〒221-0036 神奈川県横浜市神奈川区千若町2 丁目1
Tel 045-441-1017
http://www.bar-stardust.com/
ジャズ喫茶ちぐさの最大の特徴はなんといってもこの大型スピーカー。客は皆こスピーカーに正対する形で着席する。桜木町駅の西に広がる野毛の繁華街の一角に建つ。
ジャズ喫茶ちぐさ
〒231-0064 神奈川県横浜市中区野毛町2 丁目94
Tel 045-315-2006
http://noge-chigusa.com