Photography_Kenta Yoshizawa Edit & Words_Koichi Yamaguchi
ハラミュージアム アーク 150 Km from Tokyo
GET BEHAIND THCE WHEEL Part 2 HARA MUSEUM AR
心の空腹を満たしに、渋川の美術館へ
東京から約150km の距離にある群馬県渋川市。関越自動車道渋川・伊香保IC から15 分ほどのところに、日本有数の現代美術のコレクター、原俊夫氏が館長を務める、ミュージアムがある。現代美術アーティスト、草間彌生氏が、その完成時自らの代表作と謳ったインスタレーション作品を観るために、彼の地へと日帰りドライブに出る。
ハラミュージアム アーク 150 Km from Tokyo
GET BEHAIND THCE WHEEL Part 2 HARA MUSEUM AR
ギャラリーC より。トップライトより自然光が降り注ぐ気持ちのいい空間。正面に見えるのが、草間彌生氏の「ミラールーム(かぼちゃ)」
群馬県は渋川市。赤城山を望む現代と伝統の「美」に出会えるミュージアムへ。草間彌生氏が、自らの代表作と謳うインスタレーション作品を観るために日帰りドライブ。
旨い米が、胃袋を幸福で満たしてくれるのならば、知的好奇心を満たしてくれるのが、アートだ。特に現代アートは、同時代を生きるアーティストたちが、今という時代が直面している事象について、自由な想像力で作品に表現しているからだ。
ところで、現代美術には、難解なイメージから苦手意識をもつ人も多いかもしれない。しかし、現代美術だって、日本一旨い米を食すのと同様、胸を弾ませるように接してもいいのではないか。
例えば、日本が世界に誇るアーティスト、草間彌生さん。2012 年に、ルイ・ヴィトンのアーティスティックディレクターだったマーク・ジェイコブスからのラブコールにより実現した、同ブランドとの共同コレクションが世界的に話題を呼んだことで知った方も多いだろう。水玉やカボチャをモチーフとした鮮烈でポップな作品は、理屈抜きに楽しい。
そんな草間さんの作品を鑑賞するためだけにでも、訪れたい美術館がある。群馬県は渋川市にある「ハラ ミュージアム アーク」だ。品川の「原美術館」の別館として、1988 年にオープンしたミュージアムである。東京からはおよそ150km ほど。日帰りドライブの目的地としてもぴったりだ。
美術館とアーティストの濃密な関係
「ハラ ミュージアム アーク」の最大の特徴は、日本屈指の現代美術のコレクターである原俊夫氏が館長を務め、自ら創設した美術財団のプライベートコレクションを展示することだ。
「原には、作品を収集するうえで、ポリシーがあるんです」同美術館の副館長、青野和子さは、そう語る。曰く、原館長は基本的に、できる限り直接アーティストと会い、話をして初めて、作品を購入するのだそうだ。つまり、美術館とアーティスト、そしてその作品との関係性が、じつに濃いのだ。
ちなみに原館長がはじめて購入した草間作品「自己消滅」(1980 年)は、開架式収蔵庫に収められており、展覧会会期中の日曜日に行うガイドツアー(14 時半〜)で特別公開される。
一方、ギャラリーC に展示されている「ミラールーム(かぼちゃ)」(1991/2015 年)は、カボチャをモチーフとした、一辺が2m の鏡張りのキューブだ。実は内側も鏡張りになっており、側面に1 ヵ所開けられた小窓から覗き込むと、底に置かれた数多のカボチャの立体作品が、万華鏡のごとく映し出され、観る者を不思議な世界に引き込む。
この作品にまつわる、同ミュージアムならではのエピソードを、青野副館長が教えてくれた。当時、この作品を「原美術館」で展示した際、展示室の壁と床、天井全面を水玉で敷き詰め、キューブの鏡に映り込ませる演出を草間さんに提案した。すると草間さんはそれを快諾し、両者は共同でこの展示室を仕上げることとなった。
PORSCHE Cayenne e-Hybrid と「ハラミュージアム アーク」。磯崎新氏による漆黒で統一されたシャープな外観が特徴だ。
Car
PORSCHE Cayenne S e-Hybrid
プレミアムSUV クラス初となるプラグインハイブリッドカー。エンジン、モーターそれぞれで走行が可能なうえに、双方の駆動システムを連動させることで、3L サイズで5L のエンジンに匹敵する走行性能を発揮。フル充電したモーターのみで最高速度125㎞ /h、最長36㎞の距離を走破できる。
草原の美術館の真価
「これこそが私の代表作よ」
草間彌生さんは、当時このインスタレーションをとても気に入り、そう言った。かくして「ミラールーム(かぼちゃ)」は、アーティストと美術館との深い絆により、さらに特別な作品へと昇華したのである。
ここでは、そんな例を挙げると枚挙にいとまがない。その典型的な存在が、美術館建築だ。設計を担当したのは、原館長と交友のあった世界的建築家、磯崎新氏だ。二人は設計にあたり、数ヵ月にわたりディスカッションを重ね、「原美術館」の別館にふさわしいミュージアムを作り上げた。その特徴は、当時は珍しい大規模な木造建築であり、窓が存在しない直線的でシンプルな造形であり、漆黒のファサードであり、そして、この極めて個性的な意匠にもかかわらず、赤城山を見渡す広大な緑の大地に、一分の隙もなく調和している点である。
展示室に入ると、トップライトからの自然光が作品を優しく演出している。上空を雲が流れると、室内の照度が微かに変化し、呼応するかのように作品が表情を変えることに気づく。原館長と磯崎新氏による、この草原の美術館の真価に触れる瞬間だ。あなたも、心の空腹を満たしに、150km のワンデイトリップに出発してはいかがだろうか。そこには、至福の一時が待っている。
02「ハラ ミュージアム アーク」
群馬県渋川市金井2855-1 Tel.0279-24-6585 http://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/
関越自動車道 練馬IC →約1 時間→渋川・伊香保IC → 15 分→到着
※作品展示替えあり。 ※休館日等は要確認。
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