ゴルフ上達のために必要なこと

プロゴルファーでありながら、医学修士でもある横田真一さん。自分自身がゴルフに大いに悩み、理解しようとしてきた経験から、アマチュアが上達するために知っておくべきことを教えてもらった。

photography_Etsuko Murakami  Edit & Words_Hirotaka Tsuruhara

 

 

 

 

感覚派から理論派に転身

 横田真一さんは、幼少時にゴルフを始めてからずっと自分自身の感覚を信じてゴルフの技を磨いてきた。1994 年にプロ入りすると翌年にはシード権を獲得し、1997 年にはツアー初優勝。すべて自分の“ ゴルフ感” を磨いてきた成果だった。ゴルフファンから見ても、横田さんは個性的な業師タイプのプレーヤーに映る。
「その頃は、『ヨコシンの自己感覚ゴルフ』なんて本も出していました。ゴルフに関する理論なんて、どうでもいいと思っていたんです。日々の練習で得られる感覚がすべてだと考えていました」

 ツアーで安定した成績を残し、他の選手たちからの人望も厚い横田さんは選手会長にも就任。だが、感覚でやってきたゴルフにもスランプが訪れた。
「その頃に出合ったのが、廣戸聡一さんが提唱している4スタンス理論でした。簡単に言うと、人間は骨格などによってカラダの動かし方が異なっていて、それが4種類に分かれているという考え方。自分がどのタイプに属しているかを知って、適正なカラダの動かし方を体得することで、自分が持ちうるパフォーマンスを最大限に発揮できるようになるという理論です。これを自分自身に当てはめたときに、とても納得できて非常に感銘を受けました。それからは感覚に頼るだけでなく、カラダについて、もっと勉強したいと思うようになりました」

 現在、4スタンス理論はいろんなスポーツに活用されているが、ゴルフ界で広く知られるようになったのは横田さんの影響力が大きい。書籍も多く出版されているので、興味のある方はご一読を。

 その後、横田さんは自律神経がゴルフに及ぼす影響を学ぶべく、順天堂大学大学院の医学修士科に進学。「プロゴルファーにおける自律神経とパフォーマンスの関係」という卒業論文を書き上げた。
そんなわけで、現在、プロゴルファーの横田さんは医学修士でもある。

 

 

 

 

 

一時期に集中して練習すべし

 医学的な知識をも取り入れ、横田さんは自身のスランプからも脱出した。そんな横田さんだからこそ、ぜひ聞きたい。アマチュアゴルファーは、どうすれば早くゴルフがうまくなれるのか。なにか効率のいい方法やコツはないものか。
「ラウンドは好きだけど、練習はキライという人がよくいます。けれど、上達したいなら練習は必須。上達への近道があるとすれば、人生の一時期に集中してやることですね。月に1回のラウンドを30年続けても、なかなか上達はしません」

 では、多くのアマチュアが目指すシングルハンデのプレーヤーになるためには、どれくらい練習すればいいのか。
「約3000 時間の練習が必要でしょう。毎日2時間を3年間、練習場に通い続ければシングルプレーヤーにはなれます。僕はたまに、どんな人からレッスンを受ければいいですか、という質問を受けますが、それは誰だっていいです(笑)。短期間に集中して続けることが大切です」

 もうひとつのアドバイスとして、上達したいなら自分が使うゴルフクラブにもこだわるべき、と横田さんは言う。
「ゴルフというのは、クルマのレースと似ているんですよ。今やレースの世界で速いタイムを出すためには、ドライバーのレーシング技術よりもクルマ自体の性能の影響が大きくなっています。ゴルフにおいても同じことが言えます」

 横田さんは、実は大のクルマ好き。過去にはフェラーリを所有し、オーナーズクラブにも所属。レース場でレーシングドライバーに同乗してもらって、運転スキルを教わったこともあるそうだ。
「プロのドライバーに、このマシンは何cc なんですかと聞いたら、彼は知らないと言ったんです。そんなことは、どうだっていいことなんですよね。僕自身も今使っているクラブのヘッド体積が何ccかを知りません。肝心なのは、知っておいてこだわるべきところと、そうでないところを理解すること。ゴルフクラブで具体例を挙げるとすると、ライ角がとても重要。自分に合うライ角の数値を知り、調整して使う必要があります。これはクルマでいうならアライメント調整のようなもの。アライメントがズレていると、クルマはまっすぐに走りません。それと同じことがゴルフクラブでも起こります」

 

 

 

 

 ゴルフクラブの専門用語になるが、ライ角とはクラブを構えてヘッドを地面に付けたときに、シャフトと地面が織りなす角度のことだ。
「個人によって適正ライ角は変わるのですが、これをコンマミリ単位で調整する。それぐらいゴルフクラブは繊細に扱うべきものなのですが、アマチュアの方々は意外と無頓着。ゴルファーは、使うクラブの影響を受けて、そのクラブに合わせてスイングを作り上げます。自分に合っていないクラブを使っていると、スイングがどんどん悪くなって下手を固めてしまう。上達したいと思って練習を重ねるなら、きちんと自分用に調整された道具選びから始めてほしいですね」

 どんな性能のモデルを選べばいいかは、男子シニアプロの使用クラブを参考にするといいそうだ。とはいえ、シニアプロにもいろんなクラブを使っている選手がいるし、市場には多くのクラブが並んでいて迷ってしまいそうだ。
「クルマって、走り出したらすぐに性能が分かりますよね。見た目が気に入って購入したのに、走り出したら何か違うなと感じることもある。ゴルフクラブも同じ。打ってみて最初に違うと感じたら何をやってもダメ。試打してみて、自分がいいなと感じるものを探し出してみてください」

PROFILE

横田 真一

1972 年、東京生まれ。学生時代から頭角を現し、1997 年にプロ初優勝。
2000 年代後半にスランプに陥るも、2010 年「キヤノンオープン」で見事な復活優勝を果たした。

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