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発酵というのは、微生物の働きによって起こる物質の変化。その結果、人間にとって有効なものは“ 発酵”。有効とはいえないものを“ 腐敗”という。身体によい“ 発酵”にもう一度向き合ってみよう。

Photography_Wakana Baba  Edit & Text_Maki Kakimoto

 

 

 

 

発酵食品で腸内環境を整えることで、身体の土台を作っていく

 

 〝発酵食品は身体にいい〟という事実はなんとなく知ってはいるものの、そもそも発酵って?発酵食品の何が身体にいいの?と、詳しく知らない人は多いはず。発酵食スペシャリストでもある寺本りえ子さんに、〝発酵食〟についてお話を伺った。
「印象深い発酵食との出合いは、10年ほど前に、故郷の宮崎県に住む親戚の家で飲んだフルーツ酵素ジュース。家の裏庭に大きなかめを置き、山で採ってきたあけびやいちじくを黒砂糖とミルフィーユ状にして漬けていたんです。かき混ぜたりもせず、放ったらかしにしておく間に、自然に菌や酵素の働きででき上がる酵素シロップ。それを飲み始めたら、劇的に身体の変化を感じました。便の香りも変わって…腸内環境が変わったんだと実感。元気が身体に満ちていくような感覚もあり、その経験から、発酵食に改めて注目しました」

 シンガーなど音楽を生業としている頃は、体調が良くはなかったという寺本さん。酵素ジュースとの出合いがキッカケで、発酵食品に更に惹かれていく。
「まず、発酵とは目には見えない微生物(カビ、酵母、細菌)が活動して物質が変化することです。そして発酵食品とは、微生物の働きでできた食品。発酵により、消化しやすくなり、栄養価も上がり、保存性も高くなります。発酵食品を食べ続けることで、腸内細菌が整い、不調を整えたり、病気になりにくいからだをつくることにつながります。発酵食を難しく考える必要はなく、そもそも日本料理には切り離せない存在。納豆、醤油、味噌は発酵食ですから。中でもイチオシの発酵食はぬか漬け。ぬか漬けの乳酸菌は善玉菌を活性化させます。ぬか漬けには微生物がつくり出したビタミンB群が豊富で食物繊維も多いため、腸内環境の改善や便秘予防、高血糖、コレストロール値の上昇抑制、脳をリラックスさせるGABA も多く含まれます」

 

 

 

ピンクの酢飯を作るために、まずは茹でたビーツをみじん切り。
みじん切りのビーツを寿司酢に漬けておくだけで、あっという間に色鮮やかなピンクに。少量で酢飯を色づけてくれる。

 

 

 

 腸活No .1というぬか漬けが、身体だけでなく目も喜ぶ押し寿司に変身。そのカラフルで美しい佇まいは、お持たせにもピッタリ。
「発酵ってどうしても地味、面倒くさいというイメージが先走りますが、こういう華やかで美しい料理なら発酵へのイメージも変わるのでは? 発酵調味料である酢を使い、ぬか漬けやピクルスをトッピング。発酵がぎゅっと詰まった一品です。簡単なので、ぜひ試してみて欲しいです」

 日本食と深く繋がっているという発酵食。日本食の基本献立を組み立てることで、自然とバランスの良い食卓ができ上がっていく。
「〝まごわやさしい〟という言葉があります。「ま=まめ類」「ご=ごまなど種や実」「わ=わかめ、海藻類」「や=野菜」「さ=魚類」「し=しいたけ、キノコ類」「い=いも類」の頭文字。一日一度は摂取したい食材7つのこと。おおまかに一週間でこの7つをバランスよく食べているかな?と自分に確認してみてください。そうすればバランス良い食事をとる習慣が自然とできるようになるはず。そして、この7つの食材に発酵調味料を足したり、この食材で発酵料理を作れば、更に栄養素がぐっと増します」
食はすべての土台。土台をしっかりと固めておけば、年齢を重ねていくにつれて起こるさまざまなトラブルにも対応する力が生まれてくる。
「まずはぬか漬けを習慣にしてみるのはどうでしょう。私は浅漬けが好きなので、漬けるのも12時間くらい。基本的に旬の食材は何でも漬けてしまいます。意外なものでは、アボカドや豆腐なども実はぬか漬けに最適。タンパク質が多いのでまるでチーズのようにとろっとします。もしも漬けすぎて酸味が強くなった場合は、そのぬか漬けを細かく刻んでタルタルソースにしたり、餃子の具にしたりと活用方法はたくさんあるんです」

 

 

 

 

 

 

発酵食品で作る押し寿司

 

1. 酢飯を押し寿司の型に詰める。ぬか漬けやピクルスをのせるので、酢は控えめに。
2. 蓋をしてぎゅっとまんべんなく押す。
3. 蓋を外して、表面が綺麗な平らになっているか確認する。表面の美しさは、でき上がりの美しさに影響が出るので重要。
4. ぬか漬け、ピクルスを美しく並べる。さまざまな野菜を使って、色鮮やかに並べるのがポイント。「派手かな?」と思うくらいがちょうどいい。

5. もう一度蓋をしてぎゅっと押す。

6. まんべんなく力が入るように押したら、でき上がり。お持たせの時には押し寿司の型ごと持っていけて、とても便利。

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