BANG & OLUFSEN

世界に名だたるハイエンドなオーディオ&ヴィジュアルブランドとして知られるバング & オルフセン。黎明期のラジオに夢を見た二人の若きエンジニアが実家の屋根裏で立ち上げたこのブランドは、いかにして革新的な技術と洗練されたデザインを兼ね備えた銘機を次々と生み出すようになったのか。

Photography_Masahiro Okamura (CROSSOVER) Words_Shiyo Yamashita

 

 

 

 時代を切り拓く革新的な音響技術と、普遍的な機能美を追求したデザイン、選び抜かれた素材とそれを活かすクラフツマンシップ、人間工学に基づいた快適な操作性。バング& オルフセンは96年前の誕生以来、世界のオーディオ&ヴィジュアル界を常に牽引してきた。

 1920年にアメリカの商業ラジオ放送局KDKAが開局してからわずか5年後、デンマーク北西部の小さな街ストルーアで、バング & オルフセンは産声をあげた。立ち上げたのは、コペンハーゲン出身のピーター・バングと、ストルーア出身のスヴェン・オルフセンの二人。ともに電気工学を学び、生まれたばかりのラジオというメディアに魅せられた若者たちは、’25年にオルフセンの実家の屋根裏にささやかな工房を構え、当時は画期的だった電源式ラジオの開発に着手。夢の実現に向けて第一歩を踏み出したのだった。

 その後も挑戦的な姿勢で新技術を次々と開発するとともに、先進的で洗練されたデザインにもこだわり、やがてMoMAの永久収蔵品にも選ばれる数々の銘品を世に送り出した。常識に囚われない自由な精神は、現在にも引き継がれ、近年はワイヤレススピーカーやイヤフォンなど、モバイル製品でも大いに革新性を発揮している。そんな彼らの製造・開発の拠点は、今なおストルーア。作り手の熱意を大切にする地に足の着いたものづくりの姿勢にこそ、バング& オルフセンが輝き続ける理由があるのかもしれない。

 

 

 

 

若き二人のスタートアップが世界的ブランドに成長

 

 バング & オルフセンの創業者は1900 年生まれのピーター・バング(右)と1897 年生まれのスヴェン・オルフセン(左)の二人。1924 年に渡米し、ラジオ工場での勤務を経験したバングは翌年、ラジオ製造に情熱を燃やす友人のオルフセンからの誘いでストルーアに移住、ラジオメーカーとしての活動をスタート。デンマークの公共放送開始と同じ’27年に、最初の製品「Eliminator」を発表。

 主にバングが技術面、オルフセンがビジネス面を担当することで、二人は1930 〜’40年代にかけて新技術によるユニークかつハイ
エンドな製品を開発、世界的な高評を得ていく。’45 年にはナチス・ドイツの占領軍により工場が全て壊されるが、戦後すぐに復興。オルフセンは’49 年、バングは’57 年に他界したが、現在も彼らの一族は同社に深く関わり、創業時の冒険的な精神を守り続けている。

 

 

 

 

 

銘機と振り返るバング & オルフセンの歴史

 

世界中でラジオ放送が始まり、各家庭にラジオが普及し始めた頃から、進取の気風で知られてきた同社。サウンドとデザインに対する明確なヴィジョンが、他に類を見ないブランドを築き上げたといえる。

 

モダニズムデザインを大胆導入

Hyperbo 5 RG Steel

 

当時世界を席巻していたバウハウスのムーブメント、およびピーター・バングが所有していたマルセル・ブロイヤーによるカンチレバーのデスクチェアに着想を得てデザインされた初期モデル。音響機器にモダニズムデザインを大胆に導入。

先端技術を凝縮したデザイン

Beogram 4000

 

ヤコブ・イェンセンがデザインを手掛け、世界で初めてリニアトラッキングアームを取り入れたレコードプレーヤー。2020 年には95 周年を記念して95 台のみ復刻された。MoMA の永久収蔵品のひとつとしても知られている。

無駄を排除しエレガントに

Beomaster 1900

 

同じくヤコブ・イェンセンによってデザインされた、ラジオ受信機とアンプのシステム。主要な機能操作はフロントパネルにある窪みをタッチするだけで行える一方、使用頻度の低いものはパネルの下に隠すなど、美観と使いやすさを徹底追求。

 

 

 

 

 

ブランド史上最大のヒット作

Beovox CX 100

 

1978 年に登場したBeovox CX 75 の後継機として、定格入力を75W から100W に上げて登場した、バング & オルフセン史上最も商業的に成功したパッシブスピーカー。上下のウーファーが傾斜したデザインが印象的。2003 年まで製造。

アート作品のような存在感

BeoSound 9000

 

専用スタンドを取り付けて縦置きにしても、壁付けにしても、横置きにしても使える、デヴィッド・ルイスによるアイコニックで機能美に満ちたデザインが印象的な6 連装CD プレイヤー。2011 年に惜しまれながら販売終了となった。

高い機能とオブジェ的な佇まい

BeoSound 3200

 

手をかざすとガラスのドアがすっと開き下部の操作部が姿を現す、唯一無二のデザインで高い人気を誇ったラジオ& CD プレイヤー。最大396 枚のCD を保存できるハードディスクドライブも搭載していた。壁面への設置も可能。

 

 

 

 

 バング & オルフセンの歴史は誕生当初から優れたデザインとともにあった。’30年代には当時のバウハウスのモダンデザインに影響を受けた製品を発表。’50〜’60年代には当時世界を席巻したデンマークの家具デザインの流れを受け、イブ・ファビアンセンをチーフデザイナーに据え、チーク材を贅沢に使った美しい家具調のシステムをヒットさせている。

 とはいえ、現在まで続くバング & オルフセンのデザイン哲学を確立したのは、’67年に同社との協業をスタートさせたヤコブ・イェンセンだろう。同年発表の「Beomaster5000」は無駄を削ぎ落としたデザインで新時代の到来を宣言。彼は同僚のエンジニアと密接な関係を結び、真にクリエイティブな製品を次々と生み出した。革新的なツインアームを持つレコードプレーヤー、機能美を追求したアンプやスピーカーなど、彼が27年間で手掛けた製品は234にも及ぶが、そのうち14製品はMoMAの永久収蔵品に選ばれている。また、イェンセンの後継としてチーフデザイナーを務めたデヴィッド・ルイスも革新性と普遍性を兼ね備えた、ブランドを象徴する製品を数多く手掛け、一時代を築いた。

 現在もシーンを牽引するデザイナーたちと組み、ハイエンドなサウンドシステムから日々の暮らしに寄り添う「Beoplay」シリーズに至るまで、新たな銘品を送り出し続けるバング & オルフセン。来るべき100周年、そしてその先に向けて、彼らの冒険はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3つのキーワードで紐解く最新アイテム

 

21 世紀に入ってからも先進的な技術を取り入れ、バング & オルフセンらしく洗練された製品が続々登場。ワイヤレスイヤフォンから最上級のスピーカーにまで、その哲学は息づいている。

 

 

 

デザイン界をリードする国内外の才能を起用

 

最先端機能を簡単な操作で使いこなすための工夫と、インテリアの一部として空間に溶け込みつつ静かに主張もする外観、快適な使用感。セシリエ・マンツやマイケル・アナスタシアデス、ノーム・アーキテクツ、オイヴィンド ・アレクサンダー・スロットなど、気鋭の顔ぶれがエレガントな新世代の顔を作り上げている。

 

 

 

Beosound Shape

Designer: Oivind Alexander Slaatto

 

スピーカーやアンプなどの六角形の壁掛けユニットを組み合わせて構成する、モジュール式のオーディオシステム。暮らしの変化に合わせて自在に拡張・進化させられるフレキシブルさが魅力だ。デンマークの若手、オイヴィンド・アレクサンダー・スロットがデザイン。最小ユニット 6 タイル ¥643,000 〜

 

 

 

 

 

選び抜かれた素材を活かす手仕事の迫力

 

圧倒的なサウンドと美しいデザインによって聴き手の感覚を刺激するバング & オルフセンのものづくり。その背景には、機能や品質、快適性を考えて選び抜かれた本物の素材と、微細な部分にまで注意を払い、それらを正しく仕上げる職人の手仕事がある。スモークオーク、パイン、ウォールナット、メープルなどの木材、アルミニウム、レザー、それにファブリック。色や触感などのひとつひとつの要素が、幸福な音楽&映像体験に繋がっているのだ。

 

 

 

Beosound Level

Designer: Torsten Valeur

 

印象的なサウンドと独自のクラフツマンシップにくわえて、長く使うサスティナブルな精神をコンセプトに宿した新時代のポータブルワイヤレススピーカー。縦・横置き、専用ブラケットを使った壁掛けが可能で、マルチなホームレイアウトを実現する。¥180,000(Gold tone)

Beoplay E8 3rd Gen

Designer: Jacob Wagner

 

バッテリーの駆動時間が合計最大35 時間に延びた、インイヤー型ワイヤレスイヤフォンの最新型。バング & オルフセンとの協業も多いヤコブ・ワグナーがデザインを担当している。人間工学に基づいた高いフィット感にくわえ、革張りのワイヤレス充電ケースも美しい。¥34,546

Beolab 50

Designer: Andre Poulheim & Thorsten Frackenpohl(Noto)

 

'17 年発表のアクティブスピーカー。電源が入ると本体上部の音響レンズが上昇、聴き手の位置に合わせて音の聴こえ方を調整する。アルミニウムのシェルと両サイドのオーク材パネルの組み合わせも完璧。¥4,750,000(ペア)

 

 

 

 

 

 

音楽家やエンジニアが意図したままの音を再現

 

トーンマイスターのジェフ・マーティンが「音楽家や録音エンジニアが意図したものと同じ音をお客様が体験できるように、絶えず技術の限界に挑戦しています」と語る通り、イヤフォンからフラッグシップスピーカーまで一貫した音づくりを目指しているのもブランドの特徴。音楽とともにある暮らしがさらに豊かに。

 

 

 

Beovision Harmony

Designer: Torsten Valeur

 

起動時にフロントカバーが左右に開きスクリーンがせり上がる、鮮明な映像と極上のサウンドが一体となったテレビ。フロントカバーは天然木とアルミニウムの組み合わせかファブリック仕上げから選べる。(77 インチ)¥2,800,000 〜

Beosound Stage

Designer: Norm Architects

 

自宅のテレビと組み合わせて手軽に迫力あるホームシアター体験が楽しめるサウンドバー。上質なインテリアにマッチする控えめなデザインと素材感も魅力。¥220,000 〜

Beolab 90

Designer: Andre Poulheim & Thorsten Frackenpohl(Noto)

 

1 台8200W の高出力でブランド史上最もパワフルなサウンドを実現したフラッグシップスピーカー。あらゆる空間やリスニングモードに対応する機能性と芸術作品のようなフォルムが圧倒的な存在感を放つ。 ¥9,900,000(ぺア)

 

 

 

 

 

 

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