音が食の旬を極める 新しいダイニングへ

「桜鏡」の二階にある個室にも導入されたバング & オルフセンによるハイエンドスピーカー「Beolab 50」。重厚感のある空間にフィットする、温もりと洗練が同居するデザインもさることながら、圧倒的なサウンドパフォーマンスは他の追随を許さない。音を絞った状態でもその再現性は変わらず。黒羽シェフによる、季節の素材の魅力を最大限に引き出した料理の輪郭を、くっきりと引き立たせる音の力を体感して。

 

 

バング & オルフセンのスピーカーから流れるサウンドと素材の魅力を活かした極上の料理のマリアージュを堪能。そんな“ 新感覚のサウンドダイニング” が、この春御殿場の美しきリストランテ「桜鏡」に登場する。

Photography_Maruo Kono Words_Takeshi Sato

 

 

 

 

 2020年にリブランディングが完了、装いも新たに再スタートを切った御殿場「リストランテ イタリアーノ 桜鏡」。’19年まで総料理長を務めた三島「リストランテ プリマヴェーラ」からやって来た黒羽徹シェフ率いるこの名店では、豊かな自然の恵みをふんだんに使った、記憶に残る一皿に出合うことができる。

 

 

 

Toru Kuroha   黒羽徹
1996 年に渡欧、イタリアの名店やスペイン「エル・ブジ」での修業を経て帰国。2002 年より三島「ヴィラ・ディ・マンジャ・ペッシェ」(後「リストランテ プリマヴェーラ」)の総料理長を務める。’19年より御殿場「タンタローバ」へ。リニューアルを経て2020 年より「桜鏡」総料理長。

 

 

 

 その「桜鏡」の二階にある通常非公開の個室に、先日バング & オルフセンのハイエンドスピーカー『Beolab50』と『BeoplayA9』がセッティングされた。ここで、黒羽シェフの料理とその背景にある“音”を組み合わせた、これまでにないコースメニューがこの春、期間限定で披露されるのだ。シェフとともにこのプロジェクトを作り上げるのが、サウンドデザイナーの谷口周平さん。四季を感じさせる自然音と、その場所や時間に合った音楽を融合させて空間を演出する、注目の才能だ。

 そんな特別なプロジェクトに先立って、黒羽シェフと谷口さんが顔合わせ。音の存在によって料理の味わいがさらに際立つ、そんなかつてない体験を作り上げるべく、二人のオーソリティーが熱く語り合った。

 

 

 

 

 

Shuhei Taniguchi   谷口周平
レコード会社にて土岐麻子らのプロデュース、コンピレーションCD の制作などを行う。2015 年に音楽レーベル Niceness Music 及び生活と音楽合同会社を設立。新時代のBGM サービス「Field Soundgraphy」をスタート。www.fieldsoundgraphy.com

 

 

 

黒羽「私は音楽には疎いですが、食事の間のBGMは大事だと思っています。ただ、遠くからお越しいただくお客様にくつろいだ気分で料理を楽しんでいただくために、どういう音楽を流したらいいのか、むしろ何も流さないほうがいいのか、窓を開けて鳥の声を聴いていただく方がいいのか、答えがなかなか見つからないんです。ただ今回、料理と音とを繋げる試みをしたいと考えた時に、窓を開けるだけじゃつまらないな、と思った。そこで、谷口さんにお知恵を拝借したいと考えたんです」

 

 

 

 

“料理人だけが知る音が新しい食の世界に人々を誘う

 

谷口「食の場に寄り添う音楽については僕も長い間考えてきました。“ワインに合う音楽”を集めたCDを作ったこともあります。これは家で妻と食事をする時、ちょっといいワインを買った時くらいはいい音楽をかけたいと思って作ったもの。うまくはまると、ワインもお肉も味わいがワンランク上がった気がするんです」
黒羽「それは優雅ですね! お店で流す音楽も、料理の魅力を膨らませてくれるものだといいのですが。ところで、谷口さんは自然音をご自身で録りに行かれるんですか?」
谷口「そうなんです。今は機材もコンパクトなので、身一つでいろいろなところに足を運んで音を採取しています。今回は黒羽シェフだけが知っている音を集めてきて、それに合う音楽とともに料理とうまく融合させたいと思っているのですが、黒羽シェフはご自分が普段耳にしている音というとどんなものが思い浮かびますか?」
黒羽「うーん……毎日耳にしているのは厨房の音ですよね。あと思い出すのは、野菜をお願いしている農家の畑に水を撒くスプリンクラーのシュッシュッという音。食材への想像力を掻き立てるような音かどうかはわかりませんが(笑)」

 

 

 

 

黒羽シェフが信条とする美しい旬野菜の味をシンプルに際立たせた料理からの一皿「ミナミマグロとウイキョウのサラダ」

 

 

 

谷口「スプリンクラーの音、面白いですね! 僕は自然の中にある、人の営みの音も大事だと思っています。鳥の音だけを録りに行ったはずなのに、あとで聴くとどこかで木を切り倒しているチェーンソーの音や、畑仕事をする人の軽トラックの音が入っていることがあります。朝方街中に響く新聞配達のバイクの音や、子供の遊ぶ声……そういうものが少しあることで、むしろ自然音の臨場感が上がる気がします」
黒羽「生きた音ですよね。お皿に結びつく音であれば、背景を説明する必要はあるかもしれませんが、日常の音が入ってきても面白い。そういえば以前、イタリアのコモ湖畔に建つ架空のホテルを絵に描いてもらって、そこに至るまでの散策路や、ホテルに集う人々の姿を想像しながら料理を楽しんでいただく、という試みに挑戦したことがあります。何かしら音と料理を繋ぐガイドがあると、お客様のイマジネーションが膨らむのではないでしょうか」

 

 

 

 

谷口さんの作品の一部。左上はワインに合う音楽CD シリーズ「Les Vendanges」。羊毛とおはな「Live Out Living」では、屋外ライヴを環境音まで完全サラウンド同時録音した。ビームスとコラボした男性が家事をしたくなるCD ブックも話題に。

 

 

 

谷口「それはまさにそうですね。厨房に響く音なら説明の必要はないかもしれませんが(笑)。それでも、黒羽さんたち料理人の方だけが知る音というのもあるでしょうね」
黒羽「フランス料理は銅鍋を使うので、すごくいい音がします。まさに、食欲が湧く音ですね。イタリア料理だと薄いフライパンを使うので、音がちょっと違うんです。あとは包丁で食材を切る音、葉物野菜を一枚ずつ剥がす音、刷毛で食材を掃く時の音などもあります」
谷口「なぜ人間は料理する音を聴くと気持ちが落ち着くんでしょう?先日、料理上手の友達の家で音を録ってみたのですが、聴いているだけでお腹が空くし、幸せな気分になるんです。ところで、黒羽さんが料理で表現したいことは何ですか?」

 

 

 

 

その食材がもつ季節感をそのまま伝える誠実な料理

 

黒羽「一番は、畑から抜いた野菜をそのままお皿に載せること。ただ、全く手をかけないわけではなくて、いかに100を200にしてお出しするかが私たちの仕事です。私が日頃目指しているのは、お客様に「あ、春ね」と、季節感を感じていただけるような料理を作ること。私は以前スペインの『エル・ブジ』にいたことがあるんですが、ああいった実験的な店にいたからこそ、こういうものを求めてしまうのかもしれません」
谷口「当時は、自分たちの料理をどう思われていたんですか?」

 

 

 

 

今回の舞台となる二階の個室でプロジェクトについて真剣に意見を交わす二人。

 

 

 

黒羽「ああ、こういう考え方もあるんだな、という感じでしょうか。私たちに常に新しい手法を作ってくれたのが『エル・ブジ』とも言える。味よりも優先されるものがあるんだ、というね(笑)。料理を泡にしたり、ゼラチンで固めたりと、見るものもやることも何もかもが新鮮でした。ただ、帰国後に東京のお店で働き続ければまた違ったのでしょうが、私の場合はすぐに三島という自然豊かな場所に行くことになった。すると、近隣の生産者の方々が大切に育てた食材をいじり倒してしまっていいんだろうか? という気分になって。鋭いお客様から『食材で遊んじゃダメだよ』と叱られたこともありました。そこからですね、私の料理が大転換したのは。この店もそうですが、来てくださるのは食べ慣れたお客様。フォアグラもトリュフももういいよ、美味しい野菜を食べさせて欲しい、という。そこで初めて地に足が着きました」

 

 

 

 

生産に手間暇のかかる百合根の旨味や甘みを丁寧に引き出した「百合根とマスカルポーネチーズのニョッキ」

 

 

 

谷口「なるほど、すごく腑に落ちました。音楽も同じで、せっかく録った楽器の音も、どんどん加工してしまうと全部同じになってしまう。1990年代にはそういう音楽が多かったですね。その後、東日本大震災などの影響もあってアコースティックなサウンドが盛り返し、今はデジタルとアコースティックがバランスよく存在しているという感じでしょうか。僕らもデジタルの機器を使って録音しているので、バランスが大事なのかもしれません」
黒羽「古いものと新しいもののバランスは本当に大事だと思います。イタリアに行くと、街の中に古いものと新しいものがうまく同居しているのに気づきます。古い建築のインテリアがすごくモダンなものになっていたりね。『桜鏡』の二階の個室もクラシックでありながらスタイリッシュな空間にしたいと考え、少しずつ手を入れています。一階の空間は明るくて、どちらかというと軽やか。その分、特別な料理をお楽しみいただく二階は重厚感のある空間にしたい。そこで、バング & オルフセンの『Beolab50』とサブで『BeoplayA9』も導入しました」
谷口「本当に素晴らしい音ですよね。これまでスタジオであらゆるスピーカーの音を聴いてきましたが、それとは全然違い、聴き疲れしない。再現性が凄く、1930〜40年代のモノラル録音のライヴ音源を聴いても、人々のざわめきやドラマーが床を蹴る音まで聴こえ、ライヴハウスの情景が目に浮かぶんです」

 

 

 

 

富士山の絶景が楽しめるメインダイニング。暖かい時期は広大なガーデンテラスで食事を楽しめる。

 

 

 

 

再現性抜群のスピーカーでダイニングに厨房が出現

 

黒羽「ここで流す音もきっと臨場感たっぷりに聴こえるでしょうね」
谷口「『Beolab50』からキッチンの音を流したら、この部屋に厨房があるような錯覚を覚えるかもしれません。でもそれだけだと心地よい空間とは違うので、サブの『BeoplayA9』からは料理とリンクした音楽を同時に流したいと思います」
黒羽「面白いですね。私自身にとっても音とのコラボレーションは未体験ですから、とても楽しみです」
谷口「もしかしたら、食材にまつわる音や厨房での調理音は、お料理を召し上がる時よりも、コースのイントロ部分や次の料理が出てくるまでの間に聴いていただく方がいいかもしれませんね。そうすると、次の一皿への期待を高めていただけるのではないでしょうか」

黒羽「それは素晴らしい。料理は一瞬の芸術ですから、最高の瞬間をお楽しみいただけるよう、私も万全の準備で臨みたいと思います」

 

 

 

 

コンクリートの柱や梁と煉瓦の壁面が印象的な二階のプライベートダイニング。フェルッチオ・ラヴィアーニがデザインしたペンダントランプ「Gè」がモダンな雰囲気を加味している。重厚感のある一枚板のテーブルは、黒羽シェフらスタッフ総出で制作したものだそう。今後ここに大きなオリーブの鉢が持ち込まれる予定。

 

 

 

 

 

 

JAGUAR F-TYPE
 
リストランテ イタリアーノ 桜鏡には、「ポルシェ モバイルチャージャー」2 台を設置。タイカン 4S であれば、3 時間で30%以上の充電が可能となる。

 

 

 

 

 

※ TOUCH Plus 初のダイニングイベント開催「新感覚のサウンドダイニング」は終了しました。

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