Two Contemporary Styles vol.1

ポルシェ911 カレラ4S カブリオレのインテリア。スポーツカーの定番である黒ではなくブラウンを選ぶことで、シックで落ち着いた印象となる。本文にもあるようにタッチパネルの採用などデジタル化が進むと同時に、シートの形状にもこだわるなど、「機能の進化」と「美しさの追求」の両面でクルマのインテリアは進化を続ける。

 

 

 

自動車のデザインというと、エクステリアに目を奪われがち。けれども、実際に目にする頻度はインテリアのほうがはるかに高く、身体が触れるのも内装だ。自動車評論家の飯田裕子さんに内装を語っていただき、それを暮らしのインテリアに応用する方法を考えた。

Photography_Masahiro Okamura (CROSSOVER) Hair & Make_Masako Miwa Styling_Kaori Terasawa
Model_Nami Ishibashi  Words_Takeshi Sato

 

 

 

 

 

 以前に某自動車メーカーのインテリアデザイナーに話を訊いたところ、現代のクルマの内装をデザインするのは、銀座の一等地にビルを建てるのに似た難しさがあるのだという。

 というのも、クルマの室内の広さは100年前と大差ない。一方で、運転支援装置やカーナビなど、かつてとは比べ物にならないほど取り扱う情報量が増え、スイッチ類を設置する場所の奪い合いになっているというのだ。これを解決するために、タッチパネル式のディスプレイなどの進化が進み、限られた面積で大量の情報が処理できるようになった。

 ほかにもさまざまなテクノロジーの進化によって車内は居心地のよい空間になっている。たとえば人間の骨格や身体の動きを研究する人間工学によって、シートは疲労を低減する形状になっている。あるいは騒音を抑えつつオーディオの音質を向上させる音響技術が、新しいリスニング体験をもたらす。こうしてクルマの室内は、リラックスして過ごせるプライベートな空間として、日進月歩の進化を見せている。技術の進歩で実現した、ある種の小宇宙だ。

 私たちの住まいのインテリアにおいても、プレミアムなクルマに使われるアイデアが応用できるかもしれない。たとえば上質なテクスチャーを用いた一人用のソファを入れて、そこで音楽や映像をコーヒーやお酒とともに楽しむ。家で過ごす時間を充実させること──。それはいまの時代にふさわしいライフスタイルだと言えるだろう。

 

 

 

Lexus LC

 

 POINT!

 レクサスのフラッグシップクーペであるLC は、インテリアのデザイン性とそれを具現化する素材や製造の質の高さから、日本を代表するモデルと言っても過言ではありません。

 ルーフライナー(天井の内張り)からフロントピラートリムまで同色でコーディネートするのがLC の特徴。ドレープのような模様をあしらったドアトリムや、ダッシュボードに素材が異なるレザーを用い、ステッチの間隔や糸の太さにまでこだわることで、より豊かな表情を魅せてくれます。新たにラインナップされたコンバーチブルのインテリアデザインでは、ルーフを開け放つとエクステリアの一部と化すことを意識。たとえばフロントシートの肩口にまでユニークなキルティング調のステッチを施し、ヘッドレストの背面にレクサスの“L” を型押しして、所有する喜びが一層増す仕様に。

 目に見えない細部にまでこだわったインテリアは、目の肥えた大人にこそその価値を見いだせるのではないでしょうか。(文=飯田裕子)

 

 

 

 

繊細なモノ作りの心にあふれている

 

コンセプトカー「LF-FC」をベースに開発を進めたフラッグシップクーペ。
ロックボタンのないシンプルな構造のインサイドドアハンドルは、手に馴染む自然な造形を追求。
シフトノブは、触れた時にナチュラルな感覚を伝えるために、レザーのステッチの糸が表面に現れないインステッチという手法を採用。

 

 

 

無垢の金属をレザーで包む、というのが内装デザインのコンセプト。
シートはホールド性と快適性を両立するために、圧力を適切に分散する凹形状のシートクッションを開発。
ダイヤルやスイッチを操作した時の手応えやクリック感までデザインされている。

 

 

 

 

 

 

 

McLaren GT

 

 POINT!

 マクラーレンGT というモデルは、その名の通りマクラーレンが考えるグランドツアラー。「採用するパーツのすべてに最高の性能を生み出すための理由がある」というのがマクラーレンの哲学で、たとえばシートもそのひとつ。マクラーレンGT のシートには、スポーツドライビングとロングドライブ、そのどちらにもフィットする性能が与えられました。

 とりわけ長距離・長時間ドライブでも快適さを保てるようにパッドの量や肩や背中のサポート素材は最適化され、サイドサポートも細かな調整が可能です。ぜひ座面の奥まで深く腰掛け、常に肩甲骨がシートバックに密着するようにシートバックを起こし、フラットボトムのステアリングと向き合ってください。

 ドライビングポジションを整えることはスポーツのフォーム(型)と同じ。滑らかなナッパレザーのシートが吸い付くように身体をホールドする高性能ぶりに、安心感とドライビングへの期待感を抱くことができるはずです。(文=飯田裕子)

 

 

 

 

最高性能を目指した至高の機能美

 

室内のトリムは標準ではナッパレザーとなるが、オプションでソフトグレインやアルカンターラなどが用意されている。
高音質で知られるB&W のオーディオシステムは、それだけでなくデザイン賞も受賞。
アンビエント照明が室内空間をスタイリッシュに彩る。

 

 

 

「スポーツ」「スーパー」「アルティメット」という3 つのシリーズに新たに加わった“ 第4 のシリーズ” がマクラーレンGT。
スイッチ式のシフトセレクターや走行モードの選択スイッチなど、走行に関する操作系はセンターコンソールに集約。
ドライバー後方のラゲッジスペースは、ゴルフバッグが収まるほど余裕がある。

 

 

Yuko Iida   飯田裕子
自動車メーカーを経て、自動車ジャーナリストとして独立。メーカー在籍中には、実弟のレーシングドライバー、飯田章氏とのモータースポーツ活動も経験。二年半にわたる北米での海外経験も活かしながら、女性にもわかりやすい評論活動を心がける。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、FIA Women in Motorsport 委員。

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