REIMAGINE vol.3

思考し続ける日常から離れ、都心から3 時間ほどドライブをして長野県・軽井沢へ。目指すは上信越高原国立公園内にあるアウトドアリゾート「ライジング・フィールド軽井沢」。4万坪という大自然の中でネイチャーアクティビティが存分に楽しめるそこでは、普段はあまり使わない右脳を最大限に刺激し、生来の野生を蘇らせる時間が待っている。

Photography_Eric Micotto Text_Takashi Osanai

 

 

 

五感をフルに使い、能動的に料理を味わい尽くす

 

 用意されたもうひとつの体験メニューが食事だ。それにしても、なぜ戸外での食事は美味しく感じるのだろうか。幼少期に参加したボーイスカウト活動や、小学生時代の林間学校や野外キャンプで食べたカレーライスでさえ美味であった。あれは、友達や仲間と作り、みんなで食べた非日常体験であったことが大きい。プラスして、5つの感覚を使えるほどに食事は味わいが深くなっていく。

 

 

 

オリーブオイルで炒められ、食欲をそそるニンニクの香ばしい香りが立ち上がる。ニンニクがキツネ色となったらきのこ類を投入するタイミング。
カマンベールチーズを中央に置き、その周囲に温野菜を散らしていく。緑黄色野菜の彩りがきれいで、視覚からも調理を楽しませてくれる。
森の恵みをたっぷりと使ったアヒージョ。地産の食材を用意するため鮮度は抜群。その瑞々しさは見ていて感じられるほどだ。

 

 

 

想像しよう

自分の火と大地の恵みの合唱を

 

 

 

 食材を手で扱い、ぐつぐつと煮込まれていく様子を見、漂う香りを楽しみ、風を肌で感じながら、味わう。もちろん食材は旬のものを。春ならば暖かな陽気のなかで、新ジャガやアスパラガスなどの春野菜がたっぷり入ったカレーを食すといった具合。四季のある日本では、季節も味わえるのがアウトドア料理の醍醐味である。

 そこで内田さんが、改めて「ライジング・フィールド」が提供する食体験について説明してくれた。「ライジング・フィールドでは2つの意義を考えています。まずは環境の意義。やはり食事は五感すべてを使って、その瞬間を味わい尽くす行為です。五感の働きを遮るものが少ない自然の中で食事をすることで、人間が本来持ち合わせている感覚を取り戻していきたいと考えています」

 

 

 

キャンプシーンを美しく灯してくれるオイル式のランタン。LED と違い灯かりに温もりがあり、心が和む雰囲気を作り出してくれる。
ブッシュクラフトではナイフはマルチツールだ。自分専用の小さな火を絶やさぬよう火吹き棒があると便利だ。

 

 

 

 次に「ライジング・フィールド」で食事をする意義について。「多くの人にとって食事は提供される受け身の体験だと思います。そこでライジング・フィールドでは能動的に体験できるプログラムを提供しています。ブッシュクラフトのプログラムでは、調理するための火をおこすところから、あるいは焚き木を拾うところから食事体験は始まります。企業研修のバーベキューなどもチームビルディングをテーマとするプログラムに組み込み、食べる行為だけではない、幅の広い能動的な体験が詰まった時間となっています」

 さて、今回のメインメニューは「アヒージョ」である。陽が傾き始めた頃から始まった調理は、まず薪を森の中へ探しに行くことから。そして火をおこし、その一方で食材を用意していく。カマンベールを8等分にカットし、椎茸や平茸のきのこ類を切り、ニンニクをみじん切りに。火にかけた調理器具のスキレットにオリーブオイルを入れ、ニンニクを炒め、きのこ類を投入し、火が通ったらカマンベールを中央に。

 

 

 

今回はアヒージョに加えて“ ぐるぐるソーセージ” とバゲットを用意。バゲットはスキレットを満たす熱々のオリーブオイルに浸して食べても美味しい。
“ ぐるぐるソーセージ” はボイル調理済みのソーセージに枝や串を刺し、カットしたパイシートを巻きつけ、熾火などでじっくり焼いて完成。熱々のうちに食せば、腹も満たされ暖も取れる。

 

 

 

 次に登場するのはブロッコリーやニンジンなどの野菜類なのだが、このときすでに仕込みは済んでいた。ステンレス製のタンブラーに一度加熱した野菜、熱湯、少々の塩を入れておいたというのだ。おかげで茹で野菜とスープのベースが出来上がっていて、野菜は調理中のスキレットに入れ、それらが浸るまでオリーブオイルをプラス。あとは徐々に煮込まれ、チーズが溶け出すのを待つだけだ。

 ここでホッとひと息。グラスを手にし、周囲に視線を送ると木々が西陽に彩られている。スキレットはリズミカルな音を奏で続け、ほどなくして香りも立ってきた。ようやく味覚を使う段階へ。贅沢な夕食は、こうして始まった。

 

 

 

 

自分と仲間だけしかいない状況で、時間に追われることもなく、手作りの料理をじっくりと味わう。まさに“ 最幸” で“ 口福” な瞬間である。

 

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